2013年10月14日

最終号

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でんしょでしょ!

vol.4



横書き版(パブー)
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縦書き版(iPadZine)
 *PDF=書籍風の縦書きレイアウト。PDFをご利用の場合はこちらがお薦め。

感想
レビュー



                   掲載作品紹介


キスキスモー.jpgキスキス・モー →すぐに読む
作 睦月カオル/絵 ひろ

君がいた幸せ。君が支えてくれた幸せ。そして――君が、守ってくれた幸せ。
心ゆさぶる名作・現代ファンタスティックドラマ


■■ 冒頭抜粋
「あっ」
 声とともに伸ばした手は僅かに届かず、クッキー缶が滑り落ちていく。
「――っ!」
 予想通りの大音響を目をつぶってやり過ごすと、散乱した床を薄目で確認してため息をつく。散らばったのが粉々になったクッキーではなかったことがせめてもの救いだ。
「なぁーぉ」
 凄まじい騒音に隣の部屋から顔を覗かせたのは、五年前から共に暮らす猫。名前はモー。相当驚いたようで、しっぽが倍に膨れあがっている。
 クローゼットの上段を整理していて、死角に置かれていた缶に肘が当たり、落としてしまったのだ。この子が下にいなくて本当によかった。
「ごめんごめん、ビックリしたよね」
 折り畳み式の脚立から降り、白黒模様の頭を撫でて言った。
「さて、と」



心、奪われて.jpg心、奪われて →すぐに読む
作 恵陽/絵 恵陽

あたし達の人生は二度と交わることはない。どんなに切なく乞い願ったとしても……
心かきむしる愛を描く・異世界ロマン


■■ 冒頭抜粋
 泣くな。
「ごめんなさい」
 泣くな、あたし。緩みそうになる涙腺を、必死で抑えた。
「あたしは貴方と共に歩めないわ」
 笑え、笑うのよ。唇の端を持ち上げて、しっかり彼の目を見て、笑うのよ。


 城の前にたくさんの人が詰めかけている。その中にあたしも混じっていた。今日の天気は雲ひとつない晴れだ。それはまるで民衆の歓喜を表しているよう。これから起こることがどれだけ皆を待たせていたか、あたしはよくわかる。それぞれが期待に満ちた表情で城から張り出した露台を仰いでいた。



空も一緒に泣くから.jpg空も一緒に泣くから →すぐに読む
作 天菜真祭/絵 天菜真祭

今から雨を降らせます! 手鞠姫となった少女は、大切な想いを胸に雨を祈る。
心ほっこりしっとり・現代青春メルヘン


■■ 冒頭抜粋
 衣装合わせと進行説明会を一度に片付けることにしたその日は、とにかく早起きした。
 始発電車に飛び乗って、乗換駅の売店でジャムパンを買って、新幹線の中で朝食代わりにかじった。それから、また在来線に乗り継ぎして……最後は、市内巡回コミュニティバスで、祐久市役所西館へ向かった。

 梅雨が明けたとたん、夏空はてんてん干しで、日傘を広げても目が回った。市役所前のバス停を降りて少し歩くだけのちょっとの間でも油断大敵と思っていた。私は色白だから、紫外線にはすごく弱いの。うっかり焼くと大変な目にあうから、日焼け止めを塗りたくって、真っ黒な日傘を持ち歩いていた。

 自動ドアを通り抜けた先、西館の一階ホールは、エアコンが良く効いていて幸せだった。何とか、約束の時間までに辿り着いて、ほっと、ひと息ついたところで、ちょっと芝居がかった声に後ろから呼ばれた。
「お疲れ様です。手鞠姫てまりひめさま」



山吹の門.jpg山吹の門 →すぐに読む
作 あんのーん/絵 あんのーん

黄昏の国で再会した少女に揺れ動く心。恋慕と嫌悪。誠意と裏切り。そして――
心突き刺す幽玄の世界・現代幻想奇譚


■■ 冒頭抜粋
 中学二年の春休み、僕は祖母の家にいた。
 三学期の終業式を終えると着替えもそこそこに、僕はひとりでここに来た。

「ごめんね竣介、お母さん、会社休めないから……」
 終業式の朝、気忙しい朝食の席で、母は申し訳なさそうにそう言った。
「いいよ、べつに」
 トーストをコーヒーで喉に流し込みながら、そっけなく僕は答えた。母が忙しいのはいつものことだし、実際、もう母親がいなければ何もできない歳でもなかった。体は少し細めだけれど、運動部に所属していないわりにはしっかりしているほうだと思う。母と並べばすでに僕のほうが背も高かった。

 自宅から特急と私鉄を乗り継いで三時間ほど行くと、古神こがみという駅に着く。駅を中心に古い町があり、その周辺には田圃が広がる、多分典型的な郊外の一市町村だ。祖母はこの町の外れで、ひとりで暮らしていた。



夜風に囁く.jpg夜風は囁く →すぐに読む
作 GB/絵 立神勇樹

あの者に報いを!――夜な夜な神の御許に通い、呪いの言葉を捧げる女の正体は!?
心昂ぶる熱血ロマン・異世界ミステリー


■■ 冒頭抜粋
 えんじの上衣じょういは正義のしるし。
 茶色の髪の青年が、調子っ外れな歌を口ずさみながら、えんじ色の上着を袖で腰に結わえた。慣れた手つきで剣帯を留め直し、「これでよし」と胸を張る。
 ここは、峰東ほうとう州の都ルドスの、馬車の行きかう中央通り。町の治安を守る警備隊、その証しである制式上着は、夏には薄手のものが支給されるのだが、この炎天下に襟つき長袖は暑苦し過ぎる、と言って、彼――ガーランはまともに着用したためしがない。
「なんだ、その変な歌は」
 少し先を歩いていた警邏の相方が、怪訝そうにガーランを振り返った。こちらは、前のボタンこそ留めてはいないものの、上着をちゃんと身に着けている。もっとも、これが普通であって、「警備隊の誇り高き象徴」を結んだり団子にしたりするのは、隊内ではガーランぐらいのものだ。



posted by なび at 19:14| 既刊

2012年03月22日

3号

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でんしょでしょ!

vol.3



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(創刊号ではデカ文字版を作成しましたが、需要が少ないようですので、通常版の文字サイズを若干大きめにして、デカ文字版の作成は見送りました。おおきな文字サイズがお好みの方は、パブー版のePubをご利用ください)

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                   掲載作品紹介


初夏のともしび初夏のともしび →すぐに読む
作 橘高有紀/絵 ひろ

祖父が遺した田舎家を訪れた真一は、見知らぬ少年に誘われ闇夜を走る。花火が上がる。祭拍子が聞こえる――
現代青春幻想譚


■■ 冒頭抜粋
 緑の山間を、歩いていた。葉の隙間から落ちるきらきらとした光のなか、鞄背負って息を切らせながら。汗をぬぐった指を地図に這わせた。バスを降りてどれだけ歩いただろう。そろそろ目的地のはずである。
 先月、祖父が死んだ。二年ほど前から入院し、会うたび痩せていく祖父の最期に、俺は立ち会うことを許されなかった。じゃあまたくるから。そう言って病室を出たときには元気そうだったが……その日の夜中、祖父は息を引き取った。両親の慌ただしさから異常を察したが、家にいるよう厳命されたのだ。
 入院中の祖父にだれよりも会いに行ったのは、きっと俺。祖母はとっくに他界していたし、親は仕事があったからだ。顔をみせるたび喜んだ祖父がする話を、なんとなく聞いていた。
(じいさんがいなくなって、ひと月)
 だが、俺の生活はなにも変わらなかった。寂しさや悲しさで胸が潰れるのだと身構えたが、心はちっとも動かなかった。祖父の冷たい身体へ触れたときでさえ、だ。現実と夢の狭間にいるような浮遊感に支配され、涙を流すことなく淡々と葬式は終わった。自分でも薄情だと思った。……五年近くを共に暮らした人が、消えたのに。



この地球の美しさといったら!この地球の美しさといったら! →すぐに読む
作 柚希実/写真 写真素材 足成

人類の存亡を一身に背負うシュウ。だが、彼の人生の歯車は、冷凍睡眠中の美女を見た時から狂いはじめた。
サスペンスフルSF


■■ 冒頭抜粋
 地球周回軌道上の宇宙船から伸びた長いアームが、地球の大気を採取してゆっくりと畳まれていく。古いアームは、時々異常な動きを見せながらも船に寄り添い、取り込んだ空気を船内に送り込んできた。
 まずここまでは上手くいった。シュウは緊張を逃すため、身体に溜め込んでいた息をすべて吐き出した。視線が落ちて目に入った服は薄汚れている。だが、どうせ宇宙船にはシュウ一人しかいないので、気にする必要はなかった。船内に残っている男物の服はこれが最後だから、どちらにしろ着替えようがないのだが。
 薄暗い室内、シュウがコンソールに指を滑らせると、気体分析機のシグナルがいくつか点滅を始めた。少しの間を置いてモニターに映し出されてくる分析結果は、この宇宙船が地球を離れる以前の数値にほど近く、人類が繁栄していた頃の状態に戻っていることを示している。
 オールクリア。
 大気以外の分析が終わっていないとはいえ、その大きく真ん中に映し出された文字に胸が高鳴った。



moonless strollmoonless stroll →すぐに読む
作 kakua/絵 damo

幼子の手を引いて聖美は家を出た。どうしようもない衝動に駆られて……
現代掌編


■■ 冒頭抜粋
 娘の、小さく柔らかな手は、聖美の左手をぎゅうと握って離さない。あたたかなそれを、聖美も強すぎないちからで握り返した。
 聖美のローファーのヒールがかつりと音を立てる。けれど、小さなスニーカーの足元では、枯れた草を踏みしめる音がする。さくり、さくりと。無言の歩みのうちに、娘はその感触に楽しみを覚え始めているらしい。
「……綺麗な音、するね」
 そう話しかけると、娘はうん、と頷く。涙のあとの残る頬を軽く撫でると、ふわり、嬉しそうに娘は笑った。好きなだけ踏んでおいでと聖美はその手を離す。認められた、と思うのか、踏みしめる足音はスピードを増した。
 聖美は静かに空を見上げる。月も星もない淀んだ空が、目の前に広がっていた。
 肌寒い、夜だった。
 真冬には程遠いはずなのに、体の芯から冷えてしまいそうな夜だった。
「……おつきさま、みえないね」
 ぽつりと、小さな声がした。いつの間にか、枯れ草を踏む足音は止まっている。
 月が好きな娘は、小さく、残念そうに呟く。うん、と聖美は答えて、ひどくあたたかな手を引いて先を促す。
「今日は、隠れてるね」
「さみしいねえ」



レーネン山中の魔物レーネン山中の魔物 →すぐに読む
文 梓寝子/絵 立神勇樹

父と大叔父が旅の青年を魔物退治に利用しようとしている!? 少年は憤りを胸に家を飛び出した!
異世界ファンタジー


■■ 冒頭抜粋
 秋も半ば過ぎの、ある日。少年が一人、急な山道を登っていた。
 レーネン山越え道沿いに魔物が出て人を食らうという噂が、麓の町では囁かれるようになっていた。
 今、少年が登っている道は山越え道の裏道で、魔物が出るといわれているあたりへと出る最短の経路である。

 少年の行動の発端は、昨夜、父に就寝の挨拶をするために執務室へ行った時にある。
 その時、父と大叔父が会話していた。
「確かに、町の維持のためには、街道に魔物が出てもらっては困る。とはいえ、あの青年に魔物が討てるのか? そもそも、あれは、本当に魔道士なのか?」
「修行中の身かもしれませんが、あのフードを着けているからには、彼もれっきとした魔道士会の魔道士です。それに、魔物を討ち果たしてもらう必要はないので。魔物と出遭って、どの程度の魔物であるか分かる結果を出してくれるだけでよいのですから。討伐の方策については、それから考えればよろしいのです」
「それもそうだな。しかし、彼が魔物に出遭うという保証はあるまい」
「それについては、手立てが。魔物寄せの術をかけた物を持たせて出立させればよいのです。彼は、あの程度の者。それに気づくことはありますまい」



身代わり令嬢の失恋身代わり令嬢の失恋 →すぐに読む
文 早瀬千夏/絵 女将

お嬢様の身代わりとしてお見合いの席に臨んだメイドのジョーン。破談させるはずが、まさかの一目惚れ!?
ラブロマンス


■■ 冒頭抜粋
 エルダー家に奉公するハウスメイド、ジョーン・アダムスの朝は早い。
 彼女は六時に起床すると午前用の仕事着である、サーモンピンクのプリントドレスを着て、丈夫な麻地のエプロンの紐を結ぶ。石炭運びや暖炉掃除で汚れてもかまわないように。
 裏階段を下りて地下の石炭置き場に行くと、シャベルでバケツに黒い塊を入れた。両手で持って、ふたたび同じ階段を上がる。
 二階に到着すると、ずらりと部屋が並んでいた。あるドアをそっと開ける。ここはエルダー家の次女の部屋で、ジョーンの担当のひとつだ。だから用があればいつも駆けつけるし、掃除もまかされている。
 ゴム底靴の足音を立てないようにそっと入室し、細心の注意を払って暖炉の火をおこす。マッチを擦って藁に点火し、小粒の石炭を燃やす。そして大きな石炭に早く燃えうつるようふいごで風を送った。ぽうっと炎が大きくなり、石炭が赤々と熱を帯びた。
 のんきに温まっているひまはない。ほかの部屋も回って火をおこさないと。
 ジョーンは入ってきたときと同じように、足音をしのばせて部屋を出ようとしたのだが。



魔女の戸棚魔女の戸棚 →すぐに読む
文 相沢秋乃/絵 あから

凍えそうな心を抱えて帰宅した深雪。双子の妹達が双子の魔女に助けを求める。「深雪ちゃんが大ぴーんち!」
現代青春抄


■■ 冒頭抜粋
 薔薇に囲まれた洋館には、二人の魔女が住んでいる。
 それはあたしたちのことさ、と、双子の魔女は、ひひひと笑って言いました。



 びしゃびしゃと、雨が降っていた。
 傘の骨が折れているからなのか、降りしきる雨はいつの間にか、内側まで侵入してきていた。気が付くと、じっとりと袖が濡れていた。制服のスカートにもいくつものシミができていて、まだら模様になったひだひだが、重たく足にまとわり付いている。お気に入りのローファーも水が染みてしまっていて、つま先がじっとりと冷たい。白い靴下には泥のシミ。お下げにした黒い髪はべっとりとして、いつもよりもっと野暮ったく見えるに違いない。鞄もずっしり重かった。佐織とお揃いのストラップまで、しょんぼりと雨に濡れている。
 はああ、とあたしはため息をついた。
 なんだかもう、嫌になっちゃう。
 あたしは落ち込んでいた。それはもう、どん底にまで。今日はいわゆる『厄日』というやつだったのだろう、朝から、何もかもが上手くいかなかった。朝食の時に見たテレビの占いは最悪だったし、バスがすごく混んでいて、お気に入りの傘の骨が折れてしまったし、数学の授業では当てられたし、ちゃんと解けたのに解答を間違えたし。そして。
 佐織、やっぱり、怒ってるのかなあ。



孤島に潜む影孤島に潜む影 →すぐに読む
文・写真 紅侘助

『神話』に深く魅入られた男が辿る数奇な運命――それは、人が足を踏み入れてはならない世界――
怪奇幻想譚


■■ 冒頭抜粋
 虚構が現実を凌駕する。あるいは、作り事であるはずのものが現実世界を侵食していく。
 実際にはあり得ないそういったことが、確かに存在すると思うのです。

 きっかけはネットサーフィンでした。H・P・Lを始祖とする『神話』群を扱ったサイトを渡り歩いているうちに、とあるファンサイトに辿り着いたのです。
 そこには『神話』に関するありとあらゆる項目が整然と纏められており、「クロニクル」あるいは「エンサイクロペディア」とも言うべき様相を呈していました。
 研究書を上梓したり論文を纏めたりする専門性はなくとも、その世界に強い関心を持つ私は、時が過ぎるのも忘れ画面に見入っていました。
 それに気付いたのは、ほんの些細なことからでした。
 ブラウザの画面サイズを変更しようとマウスを滑らせた時です。テキストも画像も何もない部分を白い矢印が横切る短い間に、一瞬だけポインタが指の形に変わり元に戻ったのです。隠しリンクだとピンと来ました。私は管理人の仕掛けた悪戯に応じるため慎重に画面を探り、ポインタを合わせると迷わずクリックしました。




フォルトナはきみに微笑む −For/tuna in Dice-Kingdom−フォルトナはきみに微笑む
−For/tuna in Dice-Kingdom−
 →すぐに読む
作 楽山やくら/絵 重森まさみ

ダイス・キングダムでは、すべてがダイスの目で決められていた。政治も経済も、そして――人の生き死にも。
異色ファンタジー


■■ 冒頭抜粋
[1]城の外

 右手にダイス。
 左手に薬。
 そうしていつも、わたしは振っていた。
 コロコロと転がるダイスは、とまった数字を確認したとたん、消え失せる。
 残るのは、冷たい結果だけ。毎日わたしの目に焼きつく、【0】の数字。
「――ごめんね、おじいちゃん。わたし、今日もお薬をあげられないの……」
 もう涙も出なかった。
 日に日に弱ってゆくおじいちゃんを見ても。
 それでも微笑む、おじいちゃんを見ても。
 泣けなかった。
「トナ……運命を、恨むんじゃないぞ」
 そう言い残し、とうとう死んでしまった、おじいちゃんを見ても。
 ――わたしは、泣けなかった。
 ただ哀しみと、なにもできなかった悔しさと――憎しみが、募るだけで。

 だからわたしは、旅に出た。
 もう一度――泣くために。
posted by なび at 16:02| 既刊

2011年07月31日

2号

でんしょでしょ vol.2  
でんしょでしょ!

vol.2



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                   掲載作品紹介


来客御礼来客御礼 →すぐに読む
作・絵 恵陽

ロッカー開けたらそこは異世界。可愛い女の子がお出迎え♪ ってそれはいいけど……いやいや、よくないっ!
男子高校生異世界召喚物語


■■ 冒頭抜粋
 この世界では箪笥や机の引き出しが異世界との通路になることもある。嫌な例を挙げれば公衆トイレだって異世界と通じたことがあると聞き及んでいる。
 だからきっとこれは不思議なことではないはずだ。そうでなければ、信じられるはずもない。そう、おかしくなどない。
 ……いや、やっぱ駄目だ。こんな場所に僕がいるなんて、信じたくない。
「あいやー。お客さん、お客さん。頭ダイジョブあるかー」
 だけど、無情にもあってはならない声が落ちてくる。しかも似非中国人みたいな口調で。
「頭から落ちたあるなー。こぶが出来てるかもしれないあるよ」



通り道だからって通り道だからって →すぐに読む
作 あずさ/絵 東雲一

補習帰り。星空の下、コンビニ菓子を広げてささやかなパーティー。一緒にいるのはキミと、そして……
コミカルショートショート


■■ 冒頭抜粋
 外はもうすっかり暗かった。ムッとした風が僕らを熱心に誘っている。涼しいコンビニから出てきたものだから、その勧誘はますます強烈に思えてきた。絡みついてしがみついて、何がなんでも離れない。そんな心意気を感じるくらいだ。意地になって振り払うように歩き出した僕がまるで馬鹿みたいに思えてくるほど。
「うーん、解放感!」
 ――その馬鹿さ加減を肯定するかのごとく、隣の彼女は、やけにすっきりした表情で背筋を気持ち良さそうに伸ばしている。
 何だかな。あまりにも幸せそうで、僕は思わず毒気を抜かれてしまった。
「ご機嫌だね」
「あたぼーよ」



月の光 太陽の闇月の光 太陽の闇 →すぐに読む
作 設楽土筆/絵 色崎

薄幸の少女は鏡の向こうにひとつの世界をみる。それは、太陽の王子と闇の娘の物語。
暗黒ファンタジー


■■ 冒頭抜粋
 少女は姿見のある暗い部屋に隠れて、物語の世界を紡ぎだす。
 大切にしている、真っ赤な髪の人形と、いつも物語を考えて、遊んでいた。
 鏡の中の世界には、男の子と二人の女の子……。
 物語の舞台はここではないどこか。登場人物も自分ではない、誰か。ここより、きっと素晴らしい世界。
 鏡の中に物語の世界が作られていく。

 昔々、ここではない、どこかの国の物語――。



行きゆく人に秋の夕暮れ行きゆく人に秋の夕暮れ →すぐに読む
文 梓寝子/絵 damo

薄の土手。風わたる松林。落日に染め上げられた風景の中、そぞろ歩く人。その歩みの先には……
幽玄ショートショート


■■ 冒頭抜粋
 秋は好きだ。特に秋の暮れ方はいい。
 門を出て夕日に赤く燃える土塀の間を歩くと、川辺に出る。川は黄金色から紅に染まりながら、緩やかに流れて行く。土手の薄は川面に映え、白銀に輝いている。
 橋が在る。古風な太鼓橋だ。渡り口には大きな石造りの常夜燈が在り、夕日の中に濃い長い影を引きつつ、深紅に聳えている。
 時々立ち止まりながら、ゆっくりと橋を渡る。橋の向こうは、薄の原だ。道はだらだらとその中を下っている。川風が密やかに生じさせる薄の幽かな衣擦れを聞きつつ、夕日に向かって下って行く。
 薄の原を抜けると松林が在る。林を通して遠い山並みが黒々と迫って来る。山の端を行く赤い巨陽は重苦しい沈黙を呈している。何処からともなく吹いてくる風は、蕭々と松の梢を渡って行く。



無音の響き 「RはリドルのR」シリーズ無音の響き 「RはリドルのR」シリーズ →すぐに読む
文 GB(GreenBeetle 改め)/絵 yanagi

欠けたオルゴール。大切な人へのプレゼントのはずなのに。壊れた? 壊した? それとも――!?
青春ミステリー


■■ 冒頭抜粋
「ヒーカーリー! たーすけてー!」
 初夏のキャンパスに、素っ頓狂な声が響き渡る。
 名を呼ばれた雛方光は、渋々といった様子で足を止めた。大きな溜め息一つ、ウェーブがかったミディアムヘアをばさりと揺らして、声の主を振り返る。
「助けて、ヒカリ! 壊しちゃった! サトル兄ちゃんのっ、姉ちゃんがっ、姉ちゃんでっ、おこっ、おこここ、怒られるー!」
 勢い良く駆け寄ってきたのは、ヒカリの友人の松山万里だった。さらさらのショートヘアを振り乱しながら、半べそをかいて、助けてくれと繰り返す。
 ヒカリはもう一度大きく息を吐き出してから、やれやれ、と両手を腰に当てた。



舞姫夢幻 〜サヌザと共に〜舞姫夢幻 〜サヌザと共に〜 →すぐに読む
文 冬木洋子/絵 あから

旅の楽師に不思議な老婆が語る。草原に埋もれた歴史。古の都の最後。若き王と美しき舞姫の悲話――
異世界幻想旅行記


■■ 冒頭抜粋
 砂鳥に乗って街道をゆくうちに、いつのまにか道に迷っていたらしい。
 旅人は途方に暮れてあたりを見渡した。
 丈の低い草が痩せ地にへばりつくように生えているだけの乾いた草原を突っ切る、一筋の古街道。これまでにも何度か往来したことがある見知った道筋の、このあたりは迷いようもない一本道であったはずなのに、行けども行けども、今日中に辿りつくはずだった次の宿場が見えてこないのだ。気がつくと、足下の街道自体が、人の踏み跡も絶えて久しい風情で黄褐色の砂を被り、草に埋もれかけている。
 そういえば先頃から、普段なら何組も行き会うはずの他の旅人と、一度も出会っていない。やはり気づかぬうちに古い枝道にでも迷い込んでしまったのだろうか。いや、そんな道はないはずなのだが……。胸の裡でひとりごち、旅人は暮れかけた空を仰いだ。
posted by なび at 13:41| 既刊

2011年04月09日

創刊号

でんしょでしょ vol.1  
でんしょでしょ!

vol.1














横書き版(パブー)
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縦書き版(iPadZine)
 *PDF(通常版)=書籍風の縦書きレイアウト。PDFをご利用の場合はこちらがお薦め。
 *PDF(画像なし軽量デカ文字版)=低スペックPCやスマホ用。画像がないので軽量。文字が大きいので小さな画面での閲覧向き。

感想
レビュー
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                   掲載作品紹介


ブルーノートブルーノート 一文の恋 →すぐに読む
作 恵陽/ 絵 東雲一

――佐藤君、好きです。校舎の片隅に置かれた一冊のノートに書き込まれた短い告白文に始まる小さな騒動。 爽やかな学園青春ストーリー









■■ 冒頭抜粋
 南中学校の図書館棟二階、職員棟との連絡通路手前に机が置かれている。その上には一冊のノートがある。表紙に赤い線が入った何の変哲もないキャンパスノートだ。そのノートは通称をブルーノートという。
 国語科の教師が置いたブルーノートは生徒の誰もが好きに書き込むことが出来、そして読むことが出来る。当初は生徒たちが自由に書き込んでノートの中で様々な問題提議をし、また解決していくことを望んだがその思惑は簡単に外れた。
 最初のひと月はまったく書き込みがなかった。次のひと月は程度の低い落書きがされた。更に次のひと月には無記名なのをいいことに特定の生徒の悪口が書かれ始めた。さすがにまずいと撤去も検討されたが、ある一文によって、ブルーノートの中身は一変した。
 それはそう、ある恋の告白から始まった。



天使の夢は地上を翔る天使の夢は地上を翔る →すぐに読む
作 柚希実/絵 damo

漆黒のユニフォームに身を包み颯爽と地上に降り立ったクールな天使のホットなお仕事♡ コミカル現代ファンタジー











■■ 冒頭抜粋
 光の川が緩やかに流れている。観光客がいる展望台からは、出勤する人々で溢れた朝の喧噪が、そんな風に見えるらしい。その川の中、雲上を歩いている俺にも、それぞれの頭にある輪や金髪が輝いて、美しいのは確かだ。
 とはいえ、通勤途中の俺にとっては、ただの人混みに過ぎなかった。しかも今は、早足で歩く周りの人たちをひたすら追い越しながら先を急いでいるため、その風景を乱す迷惑な奴になっているだろう。
 だが、そんなことは構いやしない。間に合うか間に合わないか、それが問題だ。
「お? 君はうちの社員じゃないか」
 俺を呼び止めた恰幅のいいスーツの男は、幸福保護株式会社天上支所の所長、つまり俺が勤めている会社のお偉方だった。遅刻ギリギリのタイミングで、やっかいな奴に出くわしてしまった。



恋人の石恋人の石 〜〈荒地の民〉の物語〜 →すぐに読む
作 冬木洋子/絵 恵陽

私の恋人は真紅の石になった。私の胸を焦がし魂までも燃やし尽くしてしまいそうな、炎の色をした石に―― 珠玉の異世界ファンタジー










■■ 冒頭抜粋
 私の恋人は、真紅の石になった。
 私も、部族の他の人たちも、誰一人、彼がそんな鮮やかな色の石になるとは思っていなかったから、呪師が炎に手を差し入れて石を取り上げた時、誰もが、その強い輝きに気圧されたように息を呑んだ。
 呪師が遺灰を凝縮させて作る形見の〈護り石〉は、普通は、皆がいかにもその人らしいと思うような、その人の生前の佇まいを偲ばせるような色をしている。たとえば、生前のその人が好んで身に付けた色や、その人の瞳の色や、その人の人柄や雰囲気になんとなく似つかわしいような色。
 だから、私もみんなも、彼はもっと地味な色の石になると思っていた。彼の瞳のような穏やかに澄んだ灰緑色や、彼の物静かで控えめな人柄に相応しいひそやかな青色、あるいは落ち着いた砂色に。

 けれど、一瞬の驚きの後、私にだけは、彼がその色の石になった理由が分かった。



いり豆を巡る冒険炒り豆をめぐる冒険 →すぐに読む
文 GreenBeetle/絵 女将

恋人に逢うためにはるばる旅をしてきたリーナを待っていたものは、都会の魅惑と、とんだトラブル!? パワフルなライトノベル











■■ 冒頭抜粋
 おおー、着いたぞーっ!
 そう心の中で叫んでから、リーナは大きく伸びをした。豪快な動きに合わせて、太い三つ編みがぶんぶんと揺れる。
 喧騒渦巻く、州都の停車場。つい今しがた停まったばかりの乗合馬車から、リーナに少し遅れて、残る乗客がのろのろと地面に降り立ちはじめた。皆一様に疲れの目立つ表情で、大儀そうに腰を叩いたり伸ばしたりしている。
「リーナちゃんは元気ねえ」
「へへへへ、そりゃー、若いですからね!」
 リーナは思いっきり得意げに胸を張って、長旅の道連れ達に笑い返した。
「リーナちゃんのお蔭で、楽しかったよ」
「そうそう。また帰りも一緒だったらいいね」
 馬車から降り立った八人は、それぞれ荷物を抱えて、各々の目的地へと散っていく。


正しい夏のつくりかた正しい夏のつくりかた →すぐに読む
文 中井かづき/絵 あから

ほたるはニセモノが嫌い。見せかけだけの物があふれる宇宙暮らしの中で、本物を求めて奮闘するのだが…… キュートなライトSF











■■ 冒頭抜粋
 ――夏などない。

 船はすでに港を離れ、宇宙空間をのんびりと航行している。
 あたしは手元のキーボードをやや乱暴に叩いて、むふふと笑った。メインディスプレイの隅に表示された室温表示が「25℃」からゆるゆると上昇していくのを横目に、コンソールの上に足を投げ出す。
 船の全システムのうち、いまマニュアル操作しているのは、操船とは関係のない居住環境系がひとつきり。操縦系はロックしてあるから、多少変なところを蹴り飛ばしても運行には影響しない。
 宇宙船の操縦にオーディン・システムが用いられるようになって以来、コンソールはすっきりとまとまっている。必要な機材はすべてフラットな卓か、操縦席正面に広がるパネル状のメインディスプレイ、そうじゃなきゃあたしたちのここ……頭の中にある。や、比喩じゃなくて。



さよならいぬの声さよならいぬの声 →すぐに読む
文 河田直樹/絵 村崎右近

死んじゃだめよリリ!! 愛犬の死を受け入れられずにいた女性が体験した、それは不思議な出来事。 心にしみる現代ファンタジー











■■ 冒頭抜粋
「何で!! 死んじゃだめよリリ!!――……

 ……――また、あの日の夢を見た。
 あの日、私は愛犬のリリと、朝の日課で散歩をしていたのだ。
 だけどリリの体調が悪そうで、私は早めに家へ帰ろうといつもとは違う道を歩いた。
 それがいけなかった。
 走って交差点を渡った時、横からものすごい勢いでトラックが向かって来た。
 あ、と思った時には、すでにトラックは目の前だった。
 ぶつかる瞬間、リリの声がした。そして衝撃。次に思考を取り戻した時には、私は地面に倒れていた。ぼやけた頭のまま、何で私、生きているんだろうと思って、ふと辺りを見ると――二十メートルほど先の道路にリリが倒れていた。
 リリはぴくりとも動かない。
 そうだ。トラックとぶつかる瞬間。リリが体当たりをして来て、私は突き飛ばされたんだ。だから、私は生きている。
 でも、あそこにいるリリは。
 一目見てわかる。
 リリは、死んでいた。


河を渡る 月下世界紀行
河を渡る 月下世界紀行 →すぐに読む
文 椎堂かおる/絵 塩

旅人が密林の大河で見たものは、運命の奔流に抗おうとする命の鮮烈な輝きだった―― 名作異世界ファンタジー









■■ 冒頭抜粋
 船を待っていた。
 湿って熱い空気が風もなく人々を包み、うだるような真昼の時間が、ねっとりと這うように過ぎていく。
 船着き場は、細長い木の葉で 葺ふかれた屋根があるだけの、掘っ立て小屋のような建物だ。人々はそこの地べたに直に座りこみ、思い思いの方法で時間をつぶしていた。
 私には行く 宛あてがなかったが、とにかくこの河を渡ってしまいたかった。
 一見、海かと思うほどの、雄大なる大河だ。泥のような色をした水がうねり、水量豊かに流れ去っていく。
  河岸かがん近くには、丸い形の大きな浮き草が繁茂していて、その上を歩けば、水の上に立っても沈まないのではないかと思えるような、鮮やかな緑の絨毯となっている。
 浮き草は、鮮やかなピンク色の大きな蕾を、いくつもつけていた。
 あれが咲く時には、ぽん、と弾けるような音がしそうだ。
 私はそんな妄想をして、河岸の柵にもたれながら、わずかな荷物を抱えていた。


音が響きわたる場所音が響きわたる場所 →すぐに読む
文 村崎右近/絵 女将

その男の名はもぐら≠ミとりの少女の夢を守るために、無敵の男が放つ弾丸が砂漠の空気を切り裂く!!  痛快SFアクション











■■ 冒頭抜粋
 闇に支配された空間を進む。
 一歩、また一歩と足を進める度に、熱い空気が首元を撫でる。
 俺を待ち受けるのは不偏の闇。ありとあらゆる光の存在を認めない暗黒の空間。
 俺の目は、光を感じるようにできていない。だから、俺の前に存在するのは闇。闇とは光のない状態。光がなければ何も見えない。何も映らない。この世界における原則。
 だが、世界の形を知る方法ならば、光に頼らずとも他に幾らでもある。

 足元に広がるのは剥き出しの地面。タイルもシートも敷かれてなどいない。
 絡み付く熱気。鼻に付く臭い。いずれも不快極まりない。
 ガソリン、油、火薬、焼けたゴム。それらすべての臭いが、競い合うようにして鼻腔に侵入してくる。
 熱気の正体は炎。
 燃えているのは車。
 炎上させたのは俺。
 必要な情報はそれだけだ。
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posted by なび at 13:33| 既刊