2013年10月14日

最終号

0929_densho.jpg

でんしょでしょ!

vol.4



横書き版(パブー)
 *HTML=ブラウザでの閲覧用。PCでそのまま見る場合はこちらをどうぞ。
 *PDF=横書きPDF。(あまり表示が綺麗じゃありません;)
 *ePub=電子書籍として閲覧の場合はこちらをどうぞ。


縦書き版(iPadZine)
 *PDF=書籍風の縦書きレイアウト。PDFをご利用の場合はこちらがお薦め。

感想
レビュー



                   掲載作品紹介


キスキスモー.jpgキスキス・モー →すぐに読む
作 睦月カオル/絵 ひろ

君がいた幸せ。君が支えてくれた幸せ。そして――君が、守ってくれた幸せ。
心ゆさぶる名作・現代ファンタスティックドラマ


■■ 冒頭抜粋
「あっ」
 声とともに伸ばした手は僅かに届かず、クッキー缶が滑り落ちていく。
「――っ!」
 予想通りの大音響を目をつぶってやり過ごすと、散乱した床を薄目で確認してため息をつく。散らばったのが粉々になったクッキーではなかったことがせめてもの救いだ。
「なぁーぉ」
 凄まじい騒音に隣の部屋から顔を覗かせたのは、五年前から共に暮らす猫。名前はモー。相当驚いたようで、しっぽが倍に膨れあがっている。
 クローゼットの上段を整理していて、死角に置かれていた缶に肘が当たり、落としてしまったのだ。この子が下にいなくて本当によかった。
「ごめんごめん、ビックリしたよね」
 折り畳み式の脚立から降り、白黒模様の頭を撫でて言った。
「さて、と」



心、奪われて.jpg心、奪われて →すぐに読む
作 恵陽/絵 恵陽

あたし達の人生は二度と交わることはない。どんなに切なく乞い願ったとしても……
心かきむしる愛を描く・異世界ロマン


■■ 冒頭抜粋
 泣くな。
「ごめんなさい」
 泣くな、あたし。緩みそうになる涙腺を、必死で抑えた。
「あたしは貴方と共に歩めないわ」
 笑え、笑うのよ。唇の端を持ち上げて、しっかり彼の目を見て、笑うのよ。


 城の前にたくさんの人が詰めかけている。その中にあたしも混じっていた。今日の天気は雲ひとつない晴れだ。それはまるで民衆の歓喜を表しているよう。これから起こることがどれだけ皆を待たせていたか、あたしはよくわかる。それぞれが期待に満ちた表情で城から張り出した露台を仰いでいた。



空も一緒に泣くから.jpg空も一緒に泣くから →すぐに読む
作 天菜真祭/絵 天菜真祭

今から雨を降らせます! 手鞠姫となった少女は、大切な想いを胸に雨を祈る。
心ほっこりしっとり・現代青春メルヘン


■■ 冒頭抜粋
 衣装合わせと進行説明会を一度に片付けることにしたその日は、とにかく早起きした。
 始発電車に飛び乗って、乗換駅の売店でジャムパンを買って、新幹線の中で朝食代わりにかじった。それから、また在来線に乗り継ぎして……最後は、市内巡回コミュニティバスで、祐久市役所西館へ向かった。

 梅雨が明けたとたん、夏空はてんてん干しで、日傘を広げても目が回った。市役所前のバス停を降りて少し歩くだけのちょっとの間でも油断大敵と思っていた。私は色白だから、紫外線にはすごく弱いの。うっかり焼くと大変な目にあうから、日焼け止めを塗りたくって、真っ黒な日傘を持ち歩いていた。

 自動ドアを通り抜けた先、西館の一階ホールは、エアコンが良く効いていて幸せだった。何とか、約束の時間までに辿り着いて、ほっと、ひと息ついたところで、ちょっと芝居がかった声に後ろから呼ばれた。
「お疲れ様です。手鞠姫てまりひめさま」



山吹の門.jpg山吹の門 →すぐに読む
作 あんのーん/絵 あんのーん

黄昏の国で再会した少女に揺れ動く心。恋慕と嫌悪。誠意と裏切り。そして――
心突き刺す幽玄の世界・現代幻想奇譚


■■ 冒頭抜粋
 中学二年の春休み、僕は祖母の家にいた。
 三学期の終業式を終えると着替えもそこそこに、僕はひとりでここに来た。

「ごめんね竣介、お母さん、会社休めないから……」
 終業式の朝、気忙しい朝食の席で、母は申し訳なさそうにそう言った。
「いいよ、べつに」
 トーストをコーヒーで喉に流し込みながら、そっけなく僕は答えた。母が忙しいのはいつものことだし、実際、もう母親がいなければ何もできない歳でもなかった。体は少し細めだけれど、運動部に所属していないわりにはしっかりしているほうだと思う。母と並べばすでに僕のほうが背も高かった。

 自宅から特急と私鉄を乗り継いで三時間ほど行くと、古神こがみという駅に着く。駅を中心に古い町があり、その周辺には田圃が広がる、多分典型的な郊外の一市町村だ。祖母はこの町の外れで、ひとりで暮らしていた。



夜風に囁く.jpg夜風は囁く →すぐに読む
作 GB/絵 立神勇樹

あの者に報いを!――夜な夜な神の御許に通い、呪いの言葉を捧げる女の正体は!?
心昂ぶる熱血ロマン・異世界ミステリー


■■ 冒頭抜粋
 えんじの上衣じょういは正義のしるし。
 茶色の髪の青年が、調子っ外れな歌を口ずさみながら、えんじ色の上着を袖で腰に結わえた。慣れた手つきで剣帯を留め直し、「これでよし」と胸を張る。
 ここは、峰東ほうとう州の都ルドスの、馬車の行きかう中央通り。町の治安を守る警備隊、その証しである制式上着は、夏には薄手のものが支給されるのだが、この炎天下に襟つき長袖は暑苦し過ぎる、と言って、彼――ガーランはまともに着用したためしがない。
「なんだ、その変な歌は」
 少し先を歩いていた警邏の相方が、怪訝そうにガーランを振り返った。こちらは、前のボタンこそ留めてはいないものの、上着をちゃんと身に着けている。もっとも、これが普通であって、「警備隊の誇り高き象徴」を結んだり団子にしたりするのは、隊内ではガーランぐらいのものだ。



posted by なび at 19:14| 既刊